ルッカ県のカンパノリ生まれのジュセッペ・ジオルゲッティの料理は、この土地の素材を生かした心温まるものだった。鶏もつのラグーソースの揚げクロスティーニ、赤ピーマンの小さなスフォルマート、黒キャベツのラビオリ 松の実とトマトのソース、フラントイオ風ズッパ、のうさぎの狩人風、洋ナシのシャルロット。
またまたズッパの登場だ。学校が始まって一週間ほどしか経っていないが、ズパがメニューに上がらない日はほとんどない。今日のズッパはフラントイオ風というルッカの伝統的な料理。黒キャベツや豆などのを入れて煮込む。

今、私の手元にイタリアの商工協会Confcommercioが発行したルッカのオリーブオイルの歴史とそれを使った料理のレシピ集がある。学校を卒業して数年後、ルッカでアパートを借りた時に、私がイタリア料理を勉強していると知った大家さんがくれたものだ。その本の中にもフラントイオ風ズッパは出てくる。料理の説明はこうだ。「ズッパ(Zuppa)という言葉は、水に浸したパンという意味の中世の言葉スッパ(Suppa)に由来する。数世紀を経て人々はこのスッパを、野原を歩いて摘んだハーブなどを加えるなどして、この上もなく、じつに見事なズッパという料理にした。」との説明書きの最後に、少量のエキストラバージンオリーブオイルによってより美味しさが増すとある。確かに濃度のあるズッパにオリーブオイルを垂らすと香りもよくなるし旨味も足されて、格段に美味しくなる。このフラントイオ風ズッパの写真には皿の縁に厚切りのパンがどっかりと置かれている。
ズッパというとパンそのものが煮込んであるもの、トスカーナの郷土料理であるリボッリータ(再び煮るの意味)がそのタイプで汁で煮込んだパンがどろどろだ。また、この日のメニューのフラントイア風ズッパやズッパ・ディ・ペッシェのようにパンがそえられていて汁を染み込ませて食べるもの。それとは別に、由来とは違ってパンが見当たらないものもある。いづれにしてもしっかりとした濃度があるものだ。
数年前、ルッカの語学学校に通った時に、学校近くの家庭に食事つきで下宿させてもらったことがある。 夫婦と高校生の男子を筆頭に4人の子供がいる食欲旺盛な家族。朝はあわただしく、寝ぐせも可愛い子供達が缶に入ったビスケットをわしづかみにして学校に出かけ、昼は家でお父さんの作った大鍋一杯のパスタを食べていた。そして夕食はだいたい家で取った鶏のブロードを使ったミネストラ。ミネストラはパンが入らずズッパよりも濃度は薄くもう少しさらさらしたものだが、野菜が沢山煮込まれたスープの中にその日によってや豆やパスタを入れて出してくれた。その後はアリスタなどの肉を少し食べて終わり。この時は11月だったのでもう少し寒くなるともっとどろどろとしたズッパのようなものを食べているのだろうか。その前の年のほぼ同じ時期にやはりルッカでアパートを借りて滞在した時、よく通った総菜屋さんのスッパ・ディ・ファッロ(麦のズッパ)はしみじみと美味しかった。何度も買っていたら、「この方が美味しいでしょ。」とオリーブオイルをかけてくれるようになって嬉しかった。多分イタリア人はこういう野菜や豆の煮込みで健康を維持していて、日本のイタリア料理店ではあまり注目されないこ手の料理こそイタリア料理の最も重要な部分なのではないかと思う。
(2010.3.11)
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