ルッカは旧市街を取り囲む城壁で有名な町だ。今は遊歩道になっている城壁の上に立つと、新しい住宅街の先に、トスカーナ特有のなだらかな丘が幾重にも広がるのが見える。
ルッカ料理学院料理に行くには、中世の面影を残す旧市街から、地元のお年寄りや子供達が乗るバスで住宅街を抜け、後は緑の平原が広がるだけという境目のようなバス停で降りる。白い石垣に掘られた、小さなほこらの中のマリア様が目印だ。その脇の、車が通るのにもやっとの細道を10分歩き、思わずかがみたくなるような小さなトンネルを抜けると、いきなり視界が開けて壮大なお屋敷が現れる。そのお屋敷の脇に立つ小さな建物がルッカ料理学院だ。
2010年の2月にルッカに出発したのは吹雪の朝だった。成田空港に集まった日本人は11人。ローマで国内便に乗り換えてピサに着くと、学校が用意した小さなマイクロバスが待っていて、薄暗い中をわけのわからないまま学校に到着した。
ひっそりとした食堂に座り、校長のジャンルーカが用意してくれた夕食をほとんど無言で食べた。クレッシェンツァという白いやわらかいチーズとトスカーナのペコリーノチーズ、野菜と豆がよく煮込まれたスープ、それにほうれん草の甘いタルト。テーブルには赤と白のワインの大きな瓶、それにトスカーナの平たいパン。
今思えばこの地域の典型的な家庭の夕食だ。不安で寒い一日を過ごした私達には申し分のない夕飯だったと思う。長い長い旅の始まり。忘れられない食卓。(2010.2.28)
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