一昨日の晩は、大友人M女史と船橋で落ち合ってビールを飲みながらタイ料理を食べた。
私のブログを読んでいる彼女が前回のブログのカルトワインに反応して、「キスラー美味しいですよね。私もフランスのワインで飲むものがない時は、キスラーを頼むんです。」私「ふ~ん。」M女史「美味しかったですか?」私「うん。」「ジャルドネですよね。」「うん。」・・・。
一向に話は膨らまないのである。なにせ「豚にに真珠」ですから。
しかし、大分前に図書館で借りて読んだワインを通じて東西の食文化を比較検証している「比較ワイン文化考」(麻井宇介著)が最近読んだ本の中で断トツに面白かったので、結局アマゾンで購入して再読している。M女史にも前回会った時に熱く熱く語ったのだが反応はいま一つ、私のワインの水先案内人のY朗さんに話しても食いついてこない。悔しいので、いや、自分の理解を深める為、今日から数日間章ごとにサマリーを記すことにしました。お教室に通ってくださっている皆様、ご興味がありましたらお付き合いください。
まず前提として、この本は初版が1981年であり、その当時の日本の状況が比較対象であること。また、著者の麻井宇介氏(1930-2003)はメルシャンの工場長を務められ後に同社の顧問になられた方です。
第Ⅰ章「飲むことと読むこと―序にかえて」 「ワイン入門」といった表題の本は、ワインが日常生活に溶け込んでいるフランスやドイツにはほとんど存在しない。そもそもワインを産出する国の人達は、自分達の周囲でできるワインをだけ飲んで生活しており、例えばイタリア人がわざわざフランスやドイツのワインを取り寄せて飲むような事はほとんどない。従って、国外のワインを選択する為のワイン入門書は必要とされない。それでは、どのような国にまたいつ頃から初心者の為のワインの手引書(産地別分類とその解説また食事との取り合わせ)が存在したのだろうか。
【ワイン入門書の発生した国と発生時期】
ワイン書の読者となる有識者階級が生まれた19世紀中葉の、いろいろなワインを選択する機会を一番多く持つ(ワインをほとんど産出しないがワインを飲みたがる)主としてイギリスである。
中世においてワイン製造に成功していたイングランドは14世紀の気候的大変動と、100年戦争の終結後にフランスの広大な領地を失ったことにより、自分達の消費するワインをほとんど輸入に頼らざるを得なくなる。このような国内のワイン需要と海洋権の掌握により当時ロンドンはワインの一大マーケットであった。
【ワイン入門書が生まれた背景】
① 19世紀中葉、イギリスでは産業革命の進展により中産階級が上流社会の一員として成り上がっていく道が開け、階級差の流動化が始まって、平民の生活意識の中に上昇志向が芽生えたこと。
② フランス革命後、宮廷の食文化が急速に一般化した中で、そのようなテーブルに乗るべきワインの知識を求める人達が出てきたこと。
③ この頃になって色もアルコール度数も低い「がぶ飲みワイン」ではなく、評価に耐えるテーブルワインが出回るようになったこと。また、ワインの流通が樽詰めから瓶詰に移行することにより、品質を保つ保存が可能となり、産地ごと、収穫年ごとに特徴が明確になった。すなわち産地ごと収穫年ごとの分類が可能になったこと。
国民あげて中流意識の中にある現代日本のワイン状況は、19世紀中葉のロンドンと似ているが、彼らのワイン書が彼らの食卓、つまり西洋の食卓の範囲で書かれたものであることを忘れてはならない。
我々が彼らの為に書かれたワイン入門書を読むことによって得られる断片的な知識は当座の役には立つかもしれないが、「人間とワインとの密接な関係」や、「ワインの本質」を理解することとは全く別の問題である。 「比較ワイン文化考」(麻井宇介著)より引用
以上
ふ~っ。おおざっぱですが、こんなところです。麻井氏の言いたい事は最後の3行に集約されていて、私がワイン愛好家の人達と接していて感じる違和感はこのところにあるのではないかと思い、第一章ですでに興味深々だったのですが、興味のない方には結構な長文ですのでどうぞ読み飛ばしてください。M女史は読んでよっ!
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